by 日本新聞協会

新聞でつかむ急所

2014年3月卒業予定者の就職活動(就活)が間もなく始まります。就活に役立つ情報収集法、新聞活用法などについて、これから就活を始める学生からの質問を交えながら、人材コンサルタントの常見陽平さんがご紹介します。

参加者
常見陽平さん(人材コンサルタント)
上田志晃さん(慶応義塾大文学部3年)
小川敬太さん(青山学院大社会情報学部3年)
進行役
守田靖さん(日本新聞協会新聞PR部会委員)

求人数は回復基調

常見さん

常見:就活が厳しくなったといわれますが、「厳しさ」には2種類ある。求人数の少なさと、企業が学生に求めるレベルが高くなったことです。求人数は、2008年のリーマン・ショック後あたりから激減した。ただし今の大学4年生ら13年3月卒業見込みの学生には、明るい兆しが見えてきた。特にサービス業の求人が増えています。新興国向けの売り上げの伸びなどから、基本的には回復基調だとみています。企業が求める人材は、「世界で戦える人」「独習できるタイプ」など高度化しています。

上田:昨年度から、就活開始が12月になりました。新聞で「就活期間が短くなると大手企業ばかりに人気が集まる」という記事を読んだのですが。

常見:確かに、最初のうちは大手に集中します。しかし実際には、多くの人は中堅・中小企業で働いていることを知ってください。企業選びのポイントは、世の中に関心を持つことと、自分に関心を持つことです。気になる企業を見つけたら、その業界全体を俯瞰(ふかん)する。その上で、自分と肌が合う企業を探すのです。

守田さん

守田:新聞も企業選びに役立つのでは。自分がどういう記事に関心があるか振り返ることで、自身の関心領域を知ることもあるかと思います。

常見:その通りです。ネット時代であっても、新聞こそ就活で大事にすべきツールです。新聞には今読むべきものが凝縮されています。いろいろな記事から「良い・悪い」「好き・嫌い」などの感情が起こる。社説ともけんかしてほしい。それぞれの意見を読んで、「自分の意見」を磨いてください。

守田:社説は、念入りに事実関係を確認した上で主張を展開しており、問題を考える窓口になります。社説を読んで違和感を覚えれば、自分の意見の芽生えです。

小川:インターンシップに参加した方が有利でしょうか。

常見:参加の仕方次第ですし、参加しなければ終わりというわけではないです。社会人を間近に見て、企業を内側から見る機会です。それをきっかけに成長する人もいます。

上田さん

上田:就活はどれだけ手を広げればよいでしょうか。私は新聞や雑誌の記者を志望しています。

常見:企業活動には仕入れ先と売り先があり、そこに関連する企業に注目するとよいでしょう。志望職種と似た要素を持つ企業や職種に注目するのもよい。記者志望なら、営業職にも関心を持ってはどうでしょうか。企業の広報担当を務めたとき、事実を元に相手から反応を引き出すところなど、記者と営業職は似ていると感じました。

小川:私はITで教育を変えられないかと思っており、教育や人材育成の業界を考えています。

常見:真っすぐにその業界に行かない方法もあります。最初は、IT企業もよいかもしれない。大手IT企業は、eラーニングや営業マン育成の仕組みが整っています。ITを活用している企業もよいですね。そこで人材育成の科学的なところも、泥臭いところも触れてはどうでしょうか。

小川:働く上で、どうキャリアを積めばよいですか。

常見:会社でいろいろな経験をすることで、自分が何に向いているか気づいていきます。企業の外で通用する人間になれとあおられがちですが、気をつけないと買いたたかれてしまう。また、「やりたいこと」より「期待されていること」を考えた方が、気持ちよく働けます。期待されていることをやると、皆が褒めてくれる。その中で、本当にやりたいことが見つかってきます。常に情報のアンテナを張り、変化の兆しを捉える。新聞を読むことに加え、情報を足で稼ぐことも必要です。自分の核になる情報を提供しあえる人を複数作るとよいでしょう。

情報収集の時間は「作る」

小川さん

守田:学生の二人は日頃、ニュースなどの情報をどう収集していますか。

小川:僕の学部では、全員に携帯電話「iPhone(アイフォーン)」が配られています。研究室ではタブレット型多機能端末「iPad(アイパッド)」も1人1台配布されています。キャンパス内は無線LANが整備されていて、ネットが中心です。気になるニュースサイトをRSSリーダーでチェックし、得たい情報をピックアップしています。

上田:携帯電話で新しいニュースを知り、あとは新聞やテレビです。新聞は1日平均30分は読みます。

常見:学生のうちは、情報の海にもまれ、泳ぎ切ってほしい。新聞、ネット、テレビは、好き嫌いせずチェックすべきです。新聞は、自宅や図書館などで読み比べて、違いを見てほしい。さまざまな情報を比較検討することで「本当は何か」が見えてきます。私も、RSSリーダーで1日3000本の見出しに目を通しています。また、「就活」などいくつかのキーワードでツイッターやブログの検索をかけ、人々の気分を知る。新聞は、一般紙や経済紙からスポーツ紙、夕刊紙を読み比べます。テレビは「就職」「就活」のキーワードで番組を録画。雑誌も気に入った特集が載っているものを週1、2誌、多い時は5、6誌買って読んでいます。本来なら、新聞は大学1年や高校生から読んでもらいたい。ネットの影響力は確かにあります。しかし、世の中を動かしている世代は、新聞を読んで意思決定をしている。

常見さん

守田:就活に役立つ情報収集法は。

常見:自分の「経済ニュース」を作ってみてはどうか。就活や自分の進路、ビジネスにつながりそうな記事を1日一つピックアップし、保存する。ニュースを探すことで、情報への嗅覚ができます。もう一つ、これだと決めた1社について詳しくなること。1社に詳しくなれば、他社と比較する視点ができます。新聞や本をしらみつぶしに読み、その社のウオッチャーになることです。

上田:情報収集にどう時間を使えばよいですか。

常見:まず、手帳にやることを書き出します。私は「可処分時間」と呼んでいますが、自由に使える時間がはっきりして時間の主導権を握れる。その中に、新聞を読む時間、ネットをチェックする時間など情報収集に集中する時間を設けるのです。私は、移動時間に本や雑誌を読むし、家でも集中して読む時間を作っています。

守田:最近の就活では、スマートフォン(スマホ)が欠かせないようですね。

常見:いつでも読み返せるようエントリーシートや企業のホームページを保存している学生もいます。動画撮影を生かして、一人で模擬面接もできます。

ネット時代だからこそ新聞で差をつけろ

守田さん

上田:新聞の経済面を読むのが苦手です。

守田:日頃使っている商品やサービスに引きつけると読みやすい。例えば、若い人たちなら、スマホ市場の記事はどうだろう。メーカー間の攻防や、販売店の動向など興味深いと思います。

常見:そこからさらに、スマホは店頭での説明に時間がかかるから、家電量販店の求人が増え、そこに人材を派遣するビジネスが伸びるのではないか……と読んでいくのです。

守田:新聞は、限られたスペースに凝縮して情報を盛り込んでいます。

小川:凝縮している分、読むのに時間がかかるのかな。ネットでは何ページかに分かれている記事でも、1ページ目で大体理解できます。紙の新聞は、これだけの量を読むのに時間を使われてしまいます。

上田:私も時間がかかります。労力がいるメディアですよね。

小川さん

常見:実は紙の新聞も、記事の最初の「リード」部分で記事全体の概要が分かるようになっています。まずは見出しだけでもよいでしょう。新聞に慣れるには、楽しみにして読むコーナーや連載を見つけてもよいです。30分とか1時間と、読む時間を決めてもよい。時間を区切れば、その時間内で知りたい情報にたどりつくこつが分かってきます。新聞1部は、新書1~2冊分の内容があり、こうしないと社会人でも全部は読み切れないですよ。

守田:新聞記事は、続報の場合、前に書いたことは繰り返しません。そのため、前日に起きたことが分からないと読みにくいですが、社説を読めば、テーマごとの概要が分かります。

小川:欲しい情報はネットから得られるので、それで十分だという気もします。

常見:新聞は1日の紙面にグラフやデータ、過去の状況などがまとまって掲載されます。ネット時代だからこそ、新聞を読むと差がつく。企業の面接担当者も読んでいる。新聞によって経済活動も動いているのです。私もネットのニュースに寄稿していますが、情報の質で新聞・雑誌に勝てない。取材にかける時間やチェック体制が違います。ネット記事は、情報のシャワーの一つとして、批判的な見方をした方がいいでしょう。

守田:新聞は、印刷して世の中に出したら、簡単には直せない。新聞社は、絶対に間違えられないという意識で確認やチェックを重ねます。

常見:私自身、常にネットに触れている「ネット人間」です。でもネット時代だからこそ紙の新聞や雑誌と触れ合ってほしい。ネットだけでは見落とす記事があるのです。紙面には、広告なども含め、時代の空気が凝縮されています。偶発的な発見も楽しんでほしい。

親しみやすいメディアに

上田さん

守田:学生の二人は、これからの新聞に対して感じることはないでしょうか。

小川:紙の新聞で「続きはウェブで」とあってもアクセスする人は少ないと思う。工夫ができるのではないでしょうか。また記事に署名のある記者がどんな人か、ネット上で知ることができたら、親しみやすく読めるかな。

上田:友達と話していて、海外の新聞はスタイリッシュで読む気をそそるという意見が出ました。日本の新聞も、そこの工夫があればいいのではないでしょうか。

守田:最近は読者との距離を近づけたいと取り組んでいます。レイアウトも、まだ工夫できると思います。

守田:最後に、常見さんから就活生にメッセージを。

常見:大学で学ぶべきことであり、社会でも求められるのは、「本当はどうなのか」「どうあるべきなのか」ということを、個人で考え続けることです。情報は足で稼いで、真偽を見極めることが大事です。新聞に限らず、情報をうのみにしない。ネットが新しくて新聞が古いというのは大間違い。情報をかぎ分ける嗅覚、見分ける目を磨いてください。

常見さんオススメ!今日から使える手帳活用術・情報収集術

常見陽平さんの手帳活用術・情報収集術アドバイス

座談の中でも出てきた常見さんの手帳の活用法と情報収集法、効率的な時間の使い方。情報収集では何に気をつけた方がよいのか、大事なポイントをコンパクトに挙げていただきました。就活生必見! ブックマークして何度も読み返そう!

常見式手帳活用術 5か条

  • 一、好みによりますが、学生がよく使う月間カレンダーは細かい空き時間がわからないのでダメ。
  • 一、手帳は、バーチカル式=1週間見開きで。1日の記入欄が縦長に並び時間の目盛りが付いているものがオススメ。
  • 一、まずは、予定だけでなく、大学の授業の準備、リポート作成、エントリーシート作成など、自分がしなければならない作業をすべて書き出そう。
  • 一、空いている時間とやらなければならないことを見て、「可処分時間」を明らかにしよう。
  • 一、全部記入した上で食事や入浴などの時間を除くと自分の可処分時間が見える。

その可処分時間から情報収集の時間を確保し、新聞や本を読んだり、RSSリーダーをチェックしたりするのに集中する。

常見式情報収集術

基本のココロエ 3か条

  • 一、「新聞もネットもテレビも雑誌も……」が合い言葉。好き嫌いせず、さまざまな情報源に接しよう。
  • 一、物事を多角的に見ることで、情報が数珠つなぎに入ってくる。
  • 一、さまざまな情報を比較検討することで、「本当は何なのだろうか?」ということが見えてくる。

新聞攻略 7か条

  • 一、自宅で取るだけでなく、図書館などを活用して読み比べて、違いを見よう。
  • 一、一般紙や経済紙だけでなく、夕刊紙やスポーツ紙も読んで、時代の気分をつかむことも大切だ。
  • 一、手に取ったら、まずは見出しを読んでみよう。見出しは、記事の一番大切なポイントを凝縮している。
  • 一、記事は原則、リード(前文)から重要な内容順に書かれている。時間がない時は、リードや最初の1~2段落だけを読んでもよい。
  • 一、新聞は1面から読むと分かりやすいようにできてはいるが、順に読む必要はない。読みたい順番で読むのが、楽しく読むコツ。僕は、子供の頃にテレビ欄が大好きだったことから、1面の後はテレビ欄から順に読むのが癖になっている。
  • 一、読む習慣をつけるため、楽しみにして必ず読む連載やコーナーを作ろう。
  • 30分や1時間など、時間を区切って読んでみよう。短い時間に自分に必要な情報を見つけ出す練習になる。

インターネットを泳ぐ 3か条

  • 一、RSSリーダーを活用してみよう。気になるサイトやブログがあったら、RSSリーダーに登録する。
  • 一、RSSリーダーの見出しで、「ネットの中の気分」をつかもう。僕は1日3000本くらいの見出しを読んでいる。
  • 一、気になるキーワードで、Twitterやブログの検索をしてみよう。GoogleやNAVERには、ブログだけを検索できる機能がある。僕は、「就活」などいくつかキーワードを決めて検索し、「みんな就活に怒りを持っているんだ」「就活で疲れている時期だな」などをつかんでいる。

雑誌に触れる 2か条

  • 一、書店やコンビニで、気になる特集がないか、タイトルや目次を見てみよう。僕は、週に1~2誌は必ず、多いときは5~6誌読んでいる。
  • 一、書店やコンビニにブラブラと行ってみる、新聞に載っている広告や中づりをチェックすると気になる雑誌を発見できる。

テレビの見方 3か条

  • 一、必ず見るお気に入りのニュースや情報番組を作ろう。
  • 一、テレビのニュースも数局見比べてみると、取り上げ方の違いが分かる。また、視聴できる場合はBSのニュース、特に海外ニュースはおすすめ。
  • 一、今は、キーワードを登録して録画できる機器もある。例えば僕は、「就職」「就活」というキーワードで録画し、情報収集の網を張っている。

常見陽平さんプロフィール

常見陽平(つねみ・ようへい)

1974年生まれ、札幌市出身。一橋大卒。リクルートで「とらばーゆ」編集部などを経た後、玩具メーカーで新卒採用を担当。09年人材採用・育成支援を手がけるクオリティ・オブ・ライフでコンサルティングに従事。12年同社フェロー。著書に「親は知らない就活の鉄則」など。

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