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2015.06.15 update.

離島経済を伝え、支えるメディア(前編)

鯨本あつこ | npo法人離島経済新聞社代表理事

島の集まりとも言える日本。現在、本土5島を除く離島は6847あり、そのうち人が住んでいるのは418島と言われています。そうした離島には、多種多様な文化や自然などが残る一方、医療や教育機会の不足、人口流出、高齢化といった多くの課題を抱えています。

そんな小さな島々に光を当てようと、島の情報を取り上げてきたのが「離島経済新聞」(通称リトケイ)です。ウェブサイトでの情報発信に始まり、タブロイド紙「季刊リトケイ」を発行。今では島の人たちとともにプロジェクトを実行するチームへと進化しています。NPO法人離島経済新聞社代表理事で「離島経済新聞」や「季刊リトケイ」編集長でもある、鯨本あつこさんにお話を伺いました。

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【本文】

Q:離島経済新聞社設立の経緯を教えてください。

A:きっかけはちょうど5年前に、東京世田谷区の池尻大橋にある「世田谷ものづくり学校」で行われていた「スクーリング・パッド」を受講したことです。私が通っていたのは「デザイン・コミュニケーション」講座で、講師の方も多彩で、編集やデザイン、世の中にあるクリエーティブな活動などを学びました。

同じクラスに、仕事をやめて瀬戸内海の島に移住しようと計画していた受講生がいて、「面白そう!」と思った受講生の何人かと、その島に遊びに行きました。

それまで島に遊びに行ったことはほとんどなく、縁があるわけでもありませんでしたが、みんなで訪れたその島で、島の魅力に触れて感化されました。大崎上島という島で、人口は8000人くらいです。

それまでは島の名前も知らなかったし、5年前はインターネットで情報を検索しても詳しい情報が出てこなかった。具体的な情報を得られないまま行ってみると島の人たちがとても温かく、都会の暮らしとまったく違う風景に出会ったんです。そこで感じた良さを情報にできないかと思い、一緒に島を訪れた受講生と「島のメディアを作ろう」と決めました。それが2010年の6月頃でした。

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Q:その離島との出会いが、鯨本さんの生活を一変させたわけですね。

A:はい。それまでは経済系の出版社で広告ディレクターをしていました。「スクーリング・パッド」を受講する前にフリーランスになっていたので、私が代表となり、ウェブサイトと会社を立ち上げました。数人で立ち上げたプロジェクトなので資金もなく、紙媒体はそれなりにコストもかかるので、当時はウェブでいいよねというスタンスで始めました。世界中のいろんな場所から、無料で読めるというのも理由です。それから1年ほどウェブを運営した後、タブロイド紙「季刊リトケイ」を創刊しました。

 

Q:ウェブからスタートして紙媒体も始められたんですね。

A:そうですね。紙媒体を作ろうと思った理由はいくつかあります。ウェブの情報は、即時性がある一方、日々膨大なニュースがアップされていくので、大事な情報が埋もれがちになるというデメリットがありました。私たちは、島の人たちの営みや活動を丁寧に取材し掲載しようと考えていたので、ウェブだけでは情報が流れてしまってもったいないと思うようになりました。

ウェブは興味がないと検索されませんし、それ以外の人には広告を打たなければ届きにくい。そもそもネットを使わない人もいる。「離島経済新聞」や「季刊リトケイ」をつくる際には、日本各地の離島の方とコミュニケーションをとります。都会の人のように常にスマートフォンを持って、ネットを見ている人たちばかりではありません。取材もメールではなく、電話やファクス、手紙などでのやりとりもあります。

それともう一つ。2011年に東京の島々、例えば、本土から片道25時間半かかる小笠原諸島まで取材に行ったのですが、海の上では電波が届かないんです。当然ウェブも見られません(笑)。小笠原に到着して、真っ青な海や空を見たときこの場所でパソコンを開きたくないな、紙の新聞を広げて読みたいなと思ったんです。

なにより私たちは島の大事な情報を扱っているので、それを紙媒体に残すべきだとも感じました。そこから準備を進めて、2012年の1月に「季刊リトケイ」を創刊しました。

 

Q:どんなことを心がけて取材・報道していますか。

A:「島の経済を伝えていく」というミッションもありますが、ゆくゆくは「島の経済を支える手助けができる存在になりたい」という思いを社名に込めています。やはり新聞を出す以上、目的を持たないといけません。ただ単に情報を集めて編集し、部数を稼ぐのではなくて、メディアを発行することで、島を想う人々の役に立つことが大切だと思います。島に暮らしている人たちの営みが、島の経済でもあります。どういう記事を選び、掲載するかの基準もそこにあります。島と島を想う人のためになる情報であるかどうか、そこが大切な基準です。

 

 

さて後編は6月19日(金)にアップされます!

PROFILE鯨本あつこ

有人離島専門のウェブメディア「離島経済新聞」、タブロイド紙「季刊リトケイ」編集長。株式会社リトルコミュニティラボ代表取締役。地方誌編集者、経済誌の広告ディレクター、イラストレーター等を経て2010年に離島経済新聞社を設立。地域メディアのプロデュースや人材育成、広報を担当。東京・世田谷区三宿エリアの活性化事業「世田谷パン祭り」、奄美群島のフリーペーパー「奄美群島時々新聞」、石垣島にゆかりのあるクリエーターを掘り起こす「石垣島creative flag」等のプロジェクトに携わる。12年ロハスデザイン大賞、グッドデザイン賞受賞。13年「tedxtokyo」登壇。美ら島沖縄大使。「離島経済新聞」

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