by 日本新聞協会
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OUENDAN新聞応援団

2014.06.02 update.

新聞の良いところは「見開き文化」

別所哲也 | 俳優

betsusyo
映画・テレビ・舞台・ラジオ等で幅広く活躍する俳優の別所哲也さん。月曜から木曜の朝6時から東京のFMラジオ局J-WAVEで放送している「J-WAVE TOKYO MORINIG RADIO」では、番組が始まる前に必ず新聞数紙を読み比べているという。俳優だけでなく、映画祭主宰者、ラジオナビゲーターとして活躍する別所さんが考える「新聞のこれから」について、様々なお話を伺いました。
 

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現代は「組み合わせの時代」。自分の興味とまったく対極にあるものにどういうふうに出合えるか…。

そんな時代だからこそ、ラジオや新聞などのトラディショナルメディアが担う役割、セレクターとしての大切な役目があると思います。

 

―別所さんはどんなふうに新聞を活用されているんですか?

 

東京のFMラジオ局J-WAVEで朝の番組を8年担当しているのですが、自分が読み上げるニュースに関して、新聞各社はどんなふうに取り上げているのか、あらゆる形でニュースを読み比べるときの原点が新聞です。ここ数年新聞は「消費者」より「生活者」という言葉を使っているなと感じています。僕もラジオ番組で、消費文化の先端をいく市民ではなくて、生活の主体者である「生活者」という言葉を最近よく使うようになったのですが、こういう言葉も新聞から知りました。国民の生活という視点で記事が際立って書かれている気がします。

 

 

―特に興味のある面はありますか?

 

俳優、映画祭の主宰者としては、エンターテインメントビジネスや、アート関連、世界中の映画祭などの話題や裏話を取り上げた記事に興味があります。

最近は経済面で、「ショートフィルム」という言葉を目にすることが増えてきました。僕は映画祭を国際文化事業としてやっています。映像映画産業の原点としてのショートフィルムは、21世紀的なコンテンツとしても取り上げられていて、電子書籍や、広告スキームの変化、ネット上での新しい商材として、そういうキーワードが出てくることが多いので、よくチェックしています。

 

―やはり、ご自身の興味のある記事が特に目に入ってくるんですか?

 

新聞の良いところは「見開き文化」なので、広げて見たときに、思わぬことに目が行き、寄り道感覚で偶発的な出合いがあり、そこにいろいろな発見があります。

年齢を重ねていくと、先入観を持ってしまい、自分の知っている社会的通念や考え方、その業界だけでしか通用しない価値観や考え方で生活してしまうことがあると思います。そんな時、見開き文化の新聞を読むことで、井の中の蛙の状態から世の中全体を見渡して物事をみることができ、気づかされることが多々あります。これは明らかにネット検索とは違います。

 

たとえば全く自分に関係のない、ある街の記事が目に飛び込んできたときに、もしかしたらそこにショートフィルムの物語性があったりするかもしれない。この事件がどうして起きたのだろうと思ったときに、自分の好奇心と興味が、全く関係のない事件とつながって、映画の材料になることは、よくあることだと思います。

 

ラジオでもよく言っていますが、現代は「組み合わせの時代」だと思います。いろんなものをアレンジメントして組み合わせていったときに、自分の興味とまったく対極にあるものにどういうふうに出合えるかが、一番難しい。そんな時代だからこそ、ラジオや新聞などのトラディショナルメディアが担う役割、セレクターとしての大切な役目があると思います。

 

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「生菓子3割、焼き菓子7割」みたいな。鮮度の高いものを追いかけるのではなく、新聞が持っている長年蓄積された「知財」を掘り起こして、もう一度焼直して検証する。そんな新聞ジャーナリズムを求めている。

 

―新聞が担う役割とは?

 

ネットにはネットの良さがありますが、新聞やラジオにはしっかりとした基礎があり、記事編集や文法を持っています。即時性ではネットにかないません。でも、一つの出来事をどういうアングルで見たか、読み解いたか、伝えたか…、ラジオだと、どういう音楽と一緒に結びつけたかなど、そういう価値をリスナーは求めていると思うし、新聞もそうだと思います。僕らが新聞で読みたいものは、新聞記者や編集している人たちの気持ちや、見出しも含めて選んだ言葉とか、切り口、切れ味みたいなものだと思います。いい寿司屋に行ったとき、ネタを出す順番や食べ方があるじゃないですか。そういう感じに似ています。新聞社やラジオは社や局によってカラーがありますよね。そういう各社が独自で持っているカラーをもっと出していった方がよいと思います。

 

―時代の変化とともに、メディアが本来あるべき姿も変わってきていると思いますか?

 

いまは映画もフィルムからデジタルメディアに変わっていく過渡期で、いろいろなことを考えさせられる時代です。インプットもアウトプットもテクノロジーも時代とともに変化しています。そんな時、僕らのショートフィルムの映画祭では、「シネマチック」とか、「Style Of Cinema」と言っていますが、そもそもシネマの様式とかスタイルってなんだっけ?と考えます。新しいことに挑戦しても、常に映画の原点に立ち返り、「映画ってそもそもなんだっけ?」「これって映画的?」ということをずっと考えています。

 

新聞も、産業革命以降、情報をけん引するトップランナーだったという、プライドは大切だと思います。しかし、今ネットメディアと付き合っていく中で、新聞的編集とはなんだろう、新聞的な見出し、意見や、読者への伝え方というのは、きっとあると思うので、そこに常に向き合い、新聞ってなんだっけ?という根本を考えてほしいです。いま新聞がやるべき大切なことは何か。新聞には市民や生活者とつながる大切な絆や信用、ライフラインみたいなものがあると思います。

 

あえて具体的にいうと、変な言い方ですが「生菓子3割、焼き菓子7割」みたいな(笑)。

鮮度の高いものを追いかけようとしたら、新聞はそこだけを求めらているのではない気がします。たとえば10年前のニュースをどう検証してきたか、私たちは今こう考えなきゃいけないんじゃないかとか、そういう提案をしてもらいたいです。そのノウハウの蓄積が新聞にはあります。知が蓄積した「知財」というものを7割くらいはちゃんと掘り起こして、もう一回提示するという方が新聞らしいと思います。生で鮮度がすぐに切れてしまうものは、時間とともにどんどん流れ去ってしまいます。過ぎ去っていって良いニュースもあると思いますが、もう一回これ焼き直さない?というか、ちょっと時間をおいて見つめたら違うことが見えてきたよね。というものを新聞にはどんどんあぶりだしてほしいです。それが新聞ジャーナリズムだと思います。

 

新聞本来の姿が出てくる

 

アメリカだと、新聞考古学とか映像考古学と言って、19世紀、20世紀のそこで書かれた文章や文体、内容など、過去の知財の遺産に向き合うことでしか、21世紀、22世紀のメディア論はないとまで言われています。日本でそういうことをやっているのかわかりませんが、そういうものに光を当てたほうが、みんな新聞を買ったり読んだりすると思います。

 

映画も新聞に似ています。20世紀に花開いた文化であり、メディアであり、事業体なので、今すごく悩んでいると思います。いろいろなメディアが増えて、悩んでいる分、最終的に映画って何だろうということを考えると、本当の本質的なことが浮かび上がってきます。蒸留酒みたいに。

新聞も同じだと思います。将来新聞がどういう形になるかわかりませんが、見開き文化だった時代の、見出しの付け方や、編集の作法は、どう生かされて、どれがこれからのメディアの形に合うのか合わないのか。何かが抜け落ちていって、最終的に純化されて残ったものが、新聞の本来の姿であるというようなものが出てくると思います。

 

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今回、別所さんはラジオや映画、新聞などのメディアの未来について、興味深いお話をしてくださいました。別所さんが国際短編映画祭を始めて16年。横浜に映画館も作り、常設で短編映画を上映しているそうです。今回の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2014」は無料上映。ぜひたくさんの方に見に来ていただき、たくさんの作品を見てもらいたいとおっしゃっていました。アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート  フィルムフェスティバル & アジア 2014」は6月15日まで開催中。
http://www.shortshorts.org/2014/

 

PROFILE別所哲也

慶應義塾大学法学部卒。90年、日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビュー。米国映画俳優組合(sag)会員となる。映画・TV・舞台・ラジオ 等で幅広く活躍中。近年では、「レ・ミゼラブル」「ナイン the musical」「ミス・サイゴン」「ユーリンタウン」などの大作・話題作の舞台に多数主演。99年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。これまでの映画祭への取り組みから、文化庁・文化発信部門の長官表彰を受賞。観光庁「visit japan 大使」、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員、カタールフレンド基金親善大使、横浜市専門委員、映画倫理委員会委員に就任。東京のfmラジオ局j-waveで、月曜から木曜の朝6時から放送している「j-wave tokyo morinig radio」ナビゲーターとして活躍中。6月13日より、天王洲・銀河劇場にて、ミュージカル「カルメン」に出演。

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