by 日本新聞協会
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OUENDAN新聞応援団

2009.11.05 update.

新聞という紙メディアの持つ力はなくならなかった。

久保 征一郎 | 株式会社ぐるなび 代表取締役社長

「1990年代の半ば、ぐるなびを立ち上げる際には、『新聞はなくなる』と話したこともあるんですよ…」
飲食店情報の検索サイトとしては草分け的存在のぐるなび。創業時から経営に参加した久保征一郎社長だが、もともとは情報システムの技術者で、交通広告大手「NKB」でウエディング情報を提供するITビジネスモデルを成功させた。
「当時は新聞の将来に疑問を持っていましたが、結果はそうではなかった。紙メディアが持つ力はなくなることはありませんでしたね」

 

ニュースそれぞれに“重み”をつけられるのが新聞の強みでしょう。

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新聞の持つ価値の最大のものは、「編集にある」と言い切る。

「インターネットの拡大で情報がリアルに伝えられ、個人レベルでもその発信が容易にできるようになりました。しかし、実際に1人が読んだり、見たりする量には限界があります。ニュースそれぞれに“重み”をつけられるのが新聞の強みでしょう。新聞の1面トップが何であるか…その結果は、それぞれの新聞が考える世の中の動きを伝えているわけですが、それはネットには及ばない部分だと思います。新聞は変革していく社会を独自の目で切り取ってほしいと思います。その価値は、それぞれの新聞の視点を強く感じさせる編集部分だと思います」

自身の新聞の読み方は、「朝の通勤時、電車の中で20分程度読むこと」が中心だ。出勤後は、クリッピングサービスを利用して、飲食やIT業界についてのニュースを中心にチェックする。
「長時間読むことはできませんが、通勤時に1日の動きを頭に入れられる。もうひとつ、新聞のよいところは意図しない情報に出合えることがあります。人間は非合理的に動いている部分があるわけで、ニュースもそれまでに読んでいたものと違うものが目に入ると気になるものです。結果的に、仕事と直接関係しない文化や生活、社会に関する記事を熱心に読んでいることがあります。そして、気になることをさらにネットで調べて検証するという使い方をします」

ぐるなびは、情報提供店舗をネットワーク化し、2009年6月末現在の加盟店舗数は4万8408店を数える。05年の大証ヘラクレス上場をへて、08年12月に東証一部上場を果たした。他のIT業界同様、若い社員が多い。「社員の平均年齢は31歳。役員クラスでも私を除けば、30代半ばが中心です。その彼らが新聞を読まないかといったら、まったく逆でものすごく読んでますよ。私より新聞の情報には敏感。仕事の最前線にある人はみんなそうじゃないでしょうか。バリバリ働く人たちはよく読み、情報をキャッチしています。そこから得られるバリュー、効率のよさは何物にも代えがたいですね」

新聞はネットに置き替わらない存在、領域であり続けると思う。

社内で新聞記事を話題にすることも多いという。
「気になる記事については、しばしば社員に意見を聞きます。私が気になる記事が彼らのアンテナに引っかからなかったり、その逆もあります。それはお互いさまで、そうやってコミュニケーションをとることから新しいビジネスのヒントも生まれてきます」

さて、今年注目したニュースは何か。
「やはり政権交代の結果が出た衆議院選挙です。あれは昨年来のリーマンショックに端を発した不況だけでなく、多くの人がマーケット至上主義経済に“ちょっと違うよ”という声をあげた結果ではないでしょうか。米国にオバマ大統領が誕生したのも、今までの流れと違うものが出ていることを感じます」

IT業界にいる立場から、将来の「新聞像」をどう見ているか。
「例えば文庫本などはデジタルブック化すると思います。しかし、新聞のように広範囲から情報が目に入るものを代替するメディアは出てこないんじゃないでしょうか。それはやはり新聞の魅力であり続けると思います」
「知的好奇心を刺激し続ける新聞に不満はない」というがあえて注文をつけてもらった。
「1990年代に、新聞はなくなる、と話した時から思っていたのは、やはり環境面への配慮でしょうか。紙に印刷しそれを配送する以上、環境負荷の点でITと大きな差がある。その改善は必要でしょう」
また、新聞社が部数を競ってきたことに触れ、「これからは部数よりも個性を出してほしい。新聞社が培ってきた長年のノウハウは一度なくなれば再構築はできません。その点でも、新聞社のカラーももっと出していいんじゃないでしょうか」という。

そして、「新聞はネットに置き替わらない存在、領域であり続けると思う」と指摘する。
「ネットのよさと紙媒体である新聞のよさというのは違う領域で共存するでしょう。新聞の世界にいる人たちが、それを十分に感じ取っていないんじゃないか、と思います。仕事でも家庭でも新聞を活用してもらうためのPRをうまくやっていない印象を受けます。新聞を読まない若い層には、お金だけではない人生の豊かさを感じ、人間としても奥行きと深みを身につけることも新聞からできる、と伝えたいです。ただ、なじんでいない人には時間がかかるかもしれませんので、新聞側から読者層を広げるアクションをもっとしてもらいたいと思います」

PROFILE久保 征一郎

69年3月東京工業大学工学部電気工学科卒業。同年、株式会社光陽製作所入社。77年株式会社テックメイトを設立、代表取締役就任。84年株式会社nkbに入社。96年同社常務取締役。「ぐるなび」をインターネット上に開設。2000年2月株式会社ぐるなび発足と同時に常務就任。専務を経て、01年6月から現職。

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