by 日本新聞協会
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OUENDAN新聞応援団

2009.05.05 update.

一般教養は新聞を読まないと身につかない。

加藤 順彦 | panasia partners pte,ltd パートナー (シンガポール代表)

新聞は世論だと思っているんです。事実を知るにはインターネットの方が早い。それよりも、「世間はどう」と思ったときに、ものの見方を示すのが新聞の役割じゃないか。社説は会社を代表する意見です。コラムや署名原稿は、載せる価値があると新聞社が判断している。そういうのが読みたいんです。
僕が若いころにインターネットはありませんでした。広告会社をやるには、あらゆることに興味を持たないと成り立たない。でも、今はこれだけ情報があふれていると、何が自分に必要か分かりません。だから、若い人は早いうちからアンテナを立てる場所を決め、それ以外の情報を取らない。それでは精神的な引きこもり状態になってしまうので、ものの見方や様々な価値観を示す新聞はとても大事なんです。

 

ものの見方や様々な価値観を示す新聞はとても大事なんです。

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僕はシンガポールで日本の新聞2紙を購読しています。事実は一つですが、新聞社によって真実は違う。事実のとらえ方を知るためには、複数の新聞を読む方がいいですね。私にとっての真実が世の中のすべてではないから。人間として成長するためには、一つの事実に対してたくさんの真実を知ることが重要です。
ニュースは事実ですが、事実をどう見るかということに価値があります。一つの事件をどう掘り下げるか。どういう人間模様があったのか。速報性よりは、記事の背景にある記者の考えや、事実を探求しようとする尊い精神みたいなものに興味があるんです。
例えば現在の金融恐慌を解釈するために、ものすごく新聞の力を借りています。あまりにも多くのことが絡んでいるので、いろんな角度から見ることが求められている。派遣村の問題にしてもそうです。自分の価値観と違う新聞の価値観を知ることも大事なんです。いろいろな見方を吸収する上で、新聞の役割はすごく大きい。新聞を読む人と読まない人とでは、知的レベルに大きな差が出ると思っています。
僕は経済面が最も気になりますが、いわゆる三面記事も読みますね。世相を反映する記事が多く、書き手が思いを反映させているんだろうなと。僕は広告の仕事をしていたので、紙面のレイアウトや見出しなどを見て、何を伝えようとしているのかを考えます。写真の選び方もいろいろ悩んでこうしたんだなと、作り手の発想から考えます。同じ事件、事故でも、新聞社のとらえ方や写真、見出しは違う。現場で同じ数十人からコメントを取っていても、紙面で取り上げるコメントの選び方は勝手です。そこに新聞の個性があると思いますし、だからこそ複数の新聞を読むのがいいんです。

自分が未熟だと認めるならば新聞を読んでほしい。

ネットが普及し、ブログなどをやる人が増えました。情報を発信することの価値観が変わっています。これからは一人一人がメディアになっていく時代、つまり「個人のメディア化」が言えるんじゃないか。新聞社はそれを支援していくべきだと思います。
その一つのヒントが読者投稿欄です。会社の価値観が反映され、ほとんどの投稿は載らないと思いますが、掲載基準を見直すのも一つの方法じゃないか。例えば、没になった投稿をネットに載せるとか。内容や投稿者によって分け、高齢者介護について30代の見方、東北地方の人の見方などを紹介すれば面白いですね。
個人のメディア化は、読者の問題なんです。ネットは読む順番をコントロールできる。新聞社側も、平等に情報は出すけど、読ませたいものは上位に載せればいいんです。
インターネットは、自分の知りたいことを検索する「目的メディア」です。ところが、新聞は価値観を提供するので、自分がまったく興味のないことも書いてある。読まなければ、生涯で知ることのない情報が載っている。それが新しい価値観や、物を見る目を養うんです。だから新聞を読むわけです。
ネットで知りたい情報はいくらでも手に入るけど、一般教養は新聞を読まないと身につかない。自分が未熟だと認めるならば新聞を読んでほしい。「おれは仙人だ」という人は必要ないですけどね。ただ、社会の一員としてやっていくために、世の中で起きていることを知るのは大事だと思います。
今の若い人は海外に興味がありません。ロシアは東欧とどんな駆け引きをしているのか。なぜアイスランドは債務不履行したのか。海外に興味がない人に世間を知ってもらうメディアとして、新聞は大事だと思います。「何でも見てやろう」という人が少ないのは残念ですね。
新聞はウェブサイトで社説や論説をどんどん発表すべきだと思います。世の中の人は「ああ、新聞はこういうことを考えているのか」とわかる。正義を求め、悪をたたこうとうする新聞の情熱を知り、自分はもっと啓発を受ける必要があると感じる。僕は万能ではないし、全人でもない。そういう人は、自分が成長したいから新聞を読むし、そうしろ、もっと賢くなれといいたい。あなたの物の見方は世の中のすべてではないということを、新聞を読んで知った方がいいと思います。

PROFILE加藤 順彦

1991年関西学院大学商学部卒。大学在学中に(株)リョーマ、(株)ダイヤルキューネットワークの設立に参画。92年、有限会社日広(現・株式会社nikko)を創業。2008年、nikkoのgmoインターネットグループ傘下入りに伴い退任し、pan asia partners pte,ltd起業のためシンガポールへ移住。関西学院大学商学部講師。

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