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2017.08.07 update.

編集手帳

読売新聞東京本社 | 2017年6月14日掲載

編集手帳
旧三井財閥を支えた実業家で、茶人としても聞こえた人に「鈍翁(どんおう)」益田孝がいる。好んで色紙に書いた言葉がある。〈茶煩悩即菩提(ちゃぼんのうそくぼだい)〉◆「茶」は煩悩の数「百八」を意味する。十を二つ並べた草かんむりに八十八を書き足して茶になる。百八の迷い(煩悩)が悟り(菩提)に至る縁(えにし)となる、との教えである。気持ちを静め、心の迷いを解くお茶の効能は多くの人が知るところで、煩悩に何かと縁の深い飲み物だろう◆〈この国に新茶を贈るよき習ひ〉(長谷川櫂)。きのう、読者の方から新茶をいただいた。静岡の銘茶で「川根茶」という◆執筆中は言葉遣いから助詞ひとつまで迷いに迷い、刷り上がった新聞で読み返しては、悔やみに悔やむ。煩悩だらけの身には、季節のありがたい薬である◆気がつけば「桜桃忌」も近い。やはり迷いの人だったらしい太宰治は書いている。〈お茶のあぶくに/きれいな私の顔が/いくつもいくつも/うつっているのさ/どうにか、なる〉(『葉』)。何かの屈託を抱えた朝の食卓で一杯のお茶を飲みながら、「どうにか、なる」。独りつぶやいている人が、どこかにいるだろう。

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VOICE!応募作品から 30代 女性 フリーライター 神奈川県

念願であるライターとしてデビューをしたのが3年前。喜びと同時に不安も感じる毎日です。表現がおかしくないか、文法をまちがえているのでは……編集さんとやり取りしながら、とにかくやるしかないと自分を鼓舞していますが、やはり不安はぬぐいきれず。そんな中、読売新聞の編集手帳にある言葉が。「執筆中は言葉遣いから助詞ひとつまで迷いに迷い、刷り上がった新聞で読み返しては、悔やみに悔やむ。」日本を代表する新聞の、大先輩というのもおこがましいのですが、それほどの存在もまた、ご自分の文章に苦悩されていました。その続きには「やはり迷いの人だったらしい太宰治は書いている。」ともあります。みんな、苦しんでも悩んでも、文章というものに向き合い、何かを伝えようと必死なのだと知りました。先人たちと同じように、私も迷い、それでも書き続けていきたい。私は物書きでありたい。あり続けたい。苦しんでもなおそう思います。駆け出しも駆け出し、ひよっこ甚だしい私に、大きな気付きを与えてくれた記事でした。記事は切り抜いて手帳に挟み、時々見返すようにしています。

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