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2016.11.18 update.

生まれたて 輝く一枚

朝日新聞社 | 2016年11月2日掲載

20161102_asahi-%e3%83%88%e3%83%aa%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e6%b8%88%e3%81%bf生まれたて、輝く1枚 乳がん経験の写真家ら、「ニューボーンフォト」撮影

生まれたての赤ちゃんの写真、ニューボーンフォト。新しいその写真表現に魅せられた女性がいる。乳がんと闘って身にしみて感じた命の輝きへの思いを、写真1枚1枚にこめる。

大阪府在住の写真家、平金(ひらがね)朋子さん(47)がお乳のしこりに気づいたのは2008年。医者に行くと、5センチほどの腫瘍(しゅよう)はがんだった。

自分の身に起こったこととは思えず、涙も出ない。じわじわ恐怖がこみ上げた。私は死ぬのか――。

右胸を全摘し、再建手術をした。術前、術後と2年近く抗がん剤治療が続いた。吐き気は苦しく、髪の毛もまつげも抜けた。このとき、38歳。「この体で、もう子どもは持てないな」。つらかった。

メーカーで事業開発をし、テレビ局に転職してアシスタントプロデューサーとなり、がむしゃらに走ってきた。ストレスで体調を崩し、退社。そして、がんとの闘い。交際していた人は病気を知り、去った。「仕事もなく体をこわし、ひとり。どん底でした」

支えてくれたのは家族だった。おいやめいがいとおしくて、カメラを向けた。優しい気持ちがわきあがる。写真に興味がわき、3年前に妊婦さんを撮るスタジオで働き始めた。

そんな駆け出しのころ、ネットで新生児を撮る写真を知った。生まれたての赤ちゃんがこんなにかわいいなんて! 死を見つめたからこそ感じる命の神秘。写真家になろう。立ち直るきっかけをニューボーンフォトがくれた。

ママのおなかの中で安心して眠っているような姿の赤ちゃんを撮るのが目標だ。この2年で20人ほど撮った。

「将来写真を見て、愛情に包まれていたと本人はかみしめてほしいし、赤ちゃんを迎えたときの喜びをお母さん、お父さんも思い出してほしい。子育てができるって、幸せなことなんです」

日本でのニューボーンフォトの第一人者といわれるのは、埼玉県在住の写真家片山しをりさん(31)。生後28日未満が新生児と呼ばれるが、片山さんは「生後数日から3週間以内の赤ちゃんを撮っています」という。

片山さんは08年、米国に滞在中、著名な写真家アン・ゲデスさんの写真集で新生児を撮る作品を知った。「きれいで圧倒されました」。米国や豪州で広がっているといわれるが、当時日本で手がけている人が見当たらず、ニューボーンフォトと名づけて活動を始めた。

生まれたての赤ちゃんはふにゃふにゃ。「細い目をあけたときの瞳のきれいなこと。ここはどんなところ? 確認するように世界を見ているんです」

待ってたよ、と新しい家族を見つめるママたちも自然に笑顔がにじみ出る。時期限定の特別な写真だ。「生まれてきてくれてありがとう! そんな家族の思いと表情を残すのがだいご味です」

(河合真美江)

◆平金さんの連絡先 studio.moon.moon@gmail.com

◆片山さんの連絡先 info@shiworiphoto.com

【写真説明】

[1]~[3]は片山しをりさん撮影

平金朋子さん撮影

平金朋子さん

片山しをりさん

(A16-1798)

 

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VOICE!砂田理恵 20歳 大学生 神奈川県

キャスターの小林麻央さんの乳がんとの闘病生活が連日報道されたり、政府によって「がんを患いながらも働きやすい社会を作る」ための有識者会議が開かれたり、数年前よりずっと「がん」というものが身近に感じられる社会になってきたように思う。そんな中で見つけたこの記事。記事の中で「死を見つめたからこそ感じる命の神秘」という言葉が特に印象に残った。病気を患うことは決して幸せなことではないけれど、苦しんだ先で得られたものがある、そんな風に感じられるこの言葉。そして乳がんを経験した写真家の人たちが撮る赤ちゃんの写真は今も病気に苦しむ人の気持ちを少しでも和らげるの可能性を秘めているのかもしれないと思った。

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